しかし、摩擦材関係の材料に関しては鎌田顧問にとっても未知の領域でした。すでに市場に出ている製品のサンプルの成分分析をおこないそれを元に始め、しばらく手探りの状態が続きました。
また弊社では鎌田顧問の参加の前から摩擦材を抄造で制作しようと試みをしておりました。しかし抄造のような湿式の製造方式ではなく乾式の製造方法が経験から優れていると感じておりました。ですので鎌田顧問には最初から乾式の製造方法も新たに編み出して欲しいと要望しました。
この製品の完成まででもっとも困難なところは材料をいかに均一に混ぜ合わせるかということでした。また、一度均一に混ぜ合わせたものは元に戻らないように綿状にすることも新たに開発した技術でした。綿状の材料を筒型の金型に入れることも困難でした。これは専用の機械の開発ということにも発展しました。この一連の全ての工程が弊社の独自の技術だと自負しております。
長い試行錯誤の末にようやく出来上がった試作品の善し悪しも、当初は「なんか柔らかい感じだな。もうちょっと硬い感じがいいのでは?」などと人間の感覚的な判断で試行錯誤するような状態でした。そして試作品を試験器で計測できるようになってからも長い時間が必要でした。「実験結果が戻ってくるまでの数ヶ月間を待つのが大変だった。その間何もできないのが辛かった。」と、その頃を振り返って鎌田顧問はそう言います。
鎌田顧問の参加から約3年が経った頃、納得のいく試作品が完成しました。「試作番号NO-17」という試作品をお客様に試してもらうところまでようやく漕ぎ着けたのです。その性能面・コスト面などで高い評価を得ることができたのが何よりでした。長い苦労が報われる瞬間でした。
今度は製品化への取り組みでした。弊社は熱硬化性樹脂においてこだわりを持って取り組んだように、生産方法にも独自の方法で取り組みました。現在では当初の試作品の性能を上回る製品が続々と誕生し、大量生産のメドもつきました。2002年度はいよいよこの製品が市場に出回る記念すべき年になります。熱硬化性樹脂におけるメリットを充分に活かしつつ、これらの技術を多様な方面に応用して、新たな市場開拓と材料から製品までの一貫体制という新たな営業形態で飛躍していきたいと思っています。